
文書作成日:2021/11/25
ハラスメントは多くの企業で発生しうる問題であり、その対策の重要性が増しています。そこでこれらの企業に求められる具体的な対策と今後の法改正の動きについて解説しましょう。
法令では、パワーハラメント(以下、「パワハラ」という)、セクシュアルハラスメント(以下、「セクハラ」という)および妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントに対し、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主の義務となっています。
2020年10月に厚生労働省が実施した「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、過去3年間にパワハラを受けたことがあると回答した人の割合は31.4%、セクハラを受けたことがあると回答した人の割合は10.2%、過去5年間に就業中に妊娠/出産した女性従業員の中で、妊娠・出産・育児休業等ハラスメントを受けたと回答した人の割合は26.3%、過去5年間に育児に関わる制度を利用しようとした男性従業員の中で、育児休業等ハラスメントを受けたと回答した者の割合は26.2%でした。
ハラスメントが大きな社会問題となっている現状でも、職場でのハラスメント行為は一定数、存在していることがわかる結果となっています。
- 事業主の方針の明確化とその周知・啓発
◇職場におけるパワハラの内容・パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、 従業員に周知・啓発する。
◇パワハラを行ってはならない旨の方針を明確化し、パワハラの行為者には懲戒処分等の対象になることを就業規則等に定め、従業員に周知する。 - 相談に応じて適切に対応するために必要な体制の整備
◇相談窓口を定め、従業員に周知し、相談窓口担当者が、内容や状況に応じて適切に対応できるようにする。
◇相談窓口担当者が、相談内容や状況に応じ、適切に対応できるようにする。 - パワハラへの事後の迅速かつ適切な対応
◇事実関係を迅速かつ正確に把握する。
◇事実関係の確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行う。
◇事実関係の確認ができた場合には、事実関係の確認後、行為者に対する措置を適正に行う。
◇事実確認ができなかった場合も同様に、再発防止に向けた措置を講ずる。 - 併せて講ずべき措置
◇相談者・行為者等のプライバシー(性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含む)を保護するために必要な措置を講じ、その旨労働者に周知する。
◇相談したこと等を理由として、解雇その他不利益取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発する。
改正育児・介護休業法が2022年4月以降、順次施行され、2022年10月より産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されます。この産後パパ育休は、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの対象範囲に含まれます。男性の育児参加が求められる中、今後、男性従業員から産後パパ育休を含む育児休業の取得に係る相談が出てくることが予想されます。男性の育児参加に対する価値観は近年変容が見られ、以前の価値観を持つ上司等が取得を阻害するような言動を取らないように、改正育児・介護休業法が施行されるタイミングで、ハラスメント研修を行うなどの取組みが求められます。
なお、パワハラ防止措置について、現在は、努力義務となっている中小企業について、2022年4月より措置義務となります。講じていない措置があれば早めに準備を進めましょう。
■参考リンク
厚生労働省「「職場のハラスメントに関する実態調査」の報告書を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18384.html
厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。